辛口の酒①

【2020年4月のブログ】

 辛口のお酒をください!との注文をよく受けますが、実は悩ましいリクエストです。お酒は酵母が糖分を分解してアルコールを生成することによって造られますが、糖分がより少ないものが辛口と言われるのが一般的です。

江戸時代に遡ると、兵庫灘の酒は硬水を仕込み水として使うため発酵が進みやすく糖分が少ない辛口の「男酒」、京都伏見の酒は軟水でゆっくり発酵させるため甘口の「女酒」、と呼ばれていたようです。戦中戦後は甘い酒が好まれていたようで、特に戦後物資の足りない時代は、原酒に水を加え嵩を3倍まで増やし、味の薄くなったぶん醸造用アルコールと糖類などで味を調整して作られておりました。三倍増醸酒と呼ばれるこの酒を若いころ飲んで二日酔いになった思い出のある方も多いかと思います。まったくひどい酒でした。

この経験から日本酒嫌いになり数十年飲まなかった方が、最近の日本酒を飲んで感動してお帰りになる光景をしばしばお見掛けします。

高度成長期に入り「剣菱」「白鷹」「菊正宗」などが辛口の酒として一躍大ブームとなり、辛口の酒=上質の旨い酒というイメージが出来上がりました。また80年代のバブル期に、新潟で五百万石を磨き超軟水の仕込み水で時間をかけて低温発酵させた「淡麗辛口」が流行したことも辛口=美味しいお酒、という印象が根付いたきっかけになったようです。

このような歴史の中で、‘辛口の酒が好き’という方もいらっしゃるかと思いますが、昨今の辛口の酒とはどのようなものでしょうか。長くなりましたので、次回のブログで解説いたします。

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