熟成古酒
春に仕込まれたお酒は香味が落ち着くまで貯蔵され、搾りたての荒々しさや角が取れ程よく熟味がのって艶やかな美味しさになり、秋口に「ひやおろし」「秋上がり」として店頭に並びます。一方古酒と言われるお酒は1年以上経過したものですが、ワイン、ウイスキー、紹興酒、泡盛、などと異なり、日本酒では熟成酒を楽しむ文化は根付いていないのが現状です。
いくつかの蔵では、3年、5年、10年熟成のお酒を販売しておりますが、需要とのバランスから決して多いとは言えません。最近日本酒専門の酒屋さんとのお付き合いしておりますが、驚くことに冷蔵庫で独自に寝かせているのをよく目にします。研究心旺盛で熱心な酒屋さんに限られますが、生酒でも吟醸酒でも古酒にしてどのように変化するのか、これは大変興味深いものです。まだまだ未知の世界ですね。
さて日本酒の熟成酒の基準はいまだ曖昧ですが、そんななか‘長期熟成酒研究会’によって熟成古酒を「満3年以上蔵元で熟成させた、糖類添加酒を除く清酒」と定義されました。ラベルに「熟成酒」「長期熟成」「秘蔵酒」という記載があっても1,2年で出荷されているものもあり、どちらかというと「ひやおろし」のような味の調和や円熟味を考慮した商品であることが多く、本来の熟成古酒を分類する意味でこのような定義がなされたようです。
熟成古酒は熟成香と呼ばれる香りと琥珀色ともいえる色が特徴です。熟成香は熟した果実のような香りで、熟成年数が長くなるほど増します。荒々しい味わいだったお酒を熟成することで琥珀色に色づき、香りは甘く濃厚になり、なめらかな口当たりになります。
日本酒サービス研究会ではワイン業界からの意見を取り入れ、新しい日本酒の分類法を提案しております。この4つの分類の一つに「熟酒」というカテゴリーがありますが、熟成古酒はこれに該当します。「利き酒師」の資格取得を目指す方は基本となりますので、是非覚えてください。
(薫酒(くんしゅ))香りの高いタイプ
果実や花のような華やかな香りが高く、軽快で爽やかな味わいが特徴です。甘い風味を感じさせるものから辛口のものまで、さまざまなタイプが存在します。主に吟醸酒系が該当します。精白度が高く、低温発酵され吟醸酵母を使用したタイプ。
(爽酒(そうしゅ))軽快でなめらかなタイプ
香りは全体的に控えめですが、新鮮で清涼感のある含み香を持ち、なめらかでみずみずしい味わいが特徴です。主に生酒、生詰、生貯、低アルコール酒が該当します。加熱殺菌されておらず熟成期間の短いタイプ。ただし軽快でなめらかな味わいを生み出す要素は多岐にわたるため、純米、本醸造、吟醸でもこのタイプに該当するものはたくさんあります。
(醇酒(じゅんしゅ))コクのあるタイプ
原料の米そのものを思わせるようなふくよかな香りと、充実した旨味を感じさせるコクのある味わいが特徴です。主に純米酒、本醸造酒が該当します(生酛、山廃系が典型的)。精白率が高くなく、アミノ酸成分が多く、生酛系の酒母を使用し、熟成期間をある程度置き、割水をせず、濾過をあまりかけないような作り方のタイプ。
(熟酒(じゅくしゅ))熟成タイプ
ドライフルーツやスパイスなどの複雑性のある練れた熟成香を持ち、とろりとした甘味や深い酸味、ボリューム感のある旨味が合わさった力強い味わいが特徴です。主に古酒、秘蔵酒、長期熟成酒が該当します。低温または常温で長期の熟成期間を経たもののことで、アミノ酸成分が非常に多いもの、アルコール度数、酸度、糖度の高いもの。活性炭処理をほとんどしていないものほど濃淳タイプになります。5年以上熟成させたものが典型的です。
熟成古酒にお目にかかる機会はあまり多くないとは思いますが、チャンスがございましたら是非お試しください。
(図引用)日本酒サービス研究会資料

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