冷酒と燗酒②
冷か燗かどちらで飲むべきでしょうか?それを知るには、温度による人の味覚の変化を知る必要があります。実は日本酒そのものの変化はほとんど起こらず、人の味覚が大きく変化します。甘味、酸味は、冷酒(5-7℃)から温度上昇によってぬる燗(40℃)近辺で最も強く感じます。熱燗以上(50℃~)になると、今度は辛み、苦味、渋みを強く感じるようになります。燗酒でも個々お好きな温度がございますので、この酒はこの温度で飲むべしとは言えないところです。
一般的に人は甘味を好みますので、ぬる燗程度を美味しいと感じる方が多いと思います。吟醸香の強い吟醸酒や特定の酸(リンゴ酸など)を含む無濾過生酒は、冷して旨いといわれております。
それでは燗酒に向くのはどういうお酒でしょう?酸味の多い酒や熟成香の強い酒が一般的に燗に向くと言われます。まずお燗にすることで甘味や旨味が増しますので、気になるところがマスキングされ、特に酸には旨味が含まれることが多いのでより強調されるようです。さらに生酛、山廃系の酒はアミノ酸が多く含まれるので、温めることでキレが出てくるとも言われます。それぞれ下記のような変化があります。
<香り>
強くわかりやすく感じられるが、爽やかさは減少する
<酸味>
柔らかくなる。冷酒ではフレッシュで爽やかに感じられ、キレがよくなる。
<甘味>
強く感じ引き立つ。熱燗以上の温度では辛みが立つため目立たなくなる
<辛み>
ぬる燗程度までは、まろやかな印象に。熱燗以上になると逆に強く感じる。
<旨味>
ボリューム感が増し、米本来の味が引き立つ。余韻まで旨みが残りやすくなる。冷酒では全体的に感じにくくなり、さっぱりとした印象になる
<アルコール>
揮発性が高まり、強く感じる。熱燗以上では、舌にピリッと刺激を感じることも。冷酒では揮発性は低くなるのでシャープな印象に。
次に冷酒に合う酒、燗に合う酒について、酸に着目して考えてみましょう。同じ酸度でも酸の種類によって異なります。
<乳酸、コハク酸>
コクや旨味、苦味を出す酸。温旨酸と呼ばれ温めると美味しく感じます
<リンゴ酸、クエン酸>
果物のような爽やかさを出す酸。冷旨酸と呼ばれ冷やすと美味しく感じます
こう考えると、無濾過生酒などはリンゴ酸・クエン酸が多いので冷酒で旨い、生酛・山廃は乳酸・コハク酸が多いので燗酒が旨い、ということが言えます。
また熟成香の強い熟成酒(古酒)も温めることにより、他の旨味が出て特有の香りがマスキングされバランスが整います。吟醸香の強い吟醸酒では、温めることにより吟醸香が強くなりすぎるので、やはり冷やして飲んだ方が良いでしょう。
神奈川県川西屋酒造の米山工場長によれば、丹澤山‘麗峰’(2年熟成)は65℃ぐらいに温めた後、温度が低下する過程(戻り燗というらしい)で飲むのが理想的で、さらにデカンタージュして空気に触れさせることでまろやかになるとのことです。
温め方も手間はかかりますが湯煎がいいと言われております。家庭では電子レンジが使われることも多いですが、加熱ムラが出たり、個人的には分子構造がこわれるのではないかとの不安もあり、しずく会では湯煎で燗をしております。そのため燗酒は5分程度お待ちいただいております。
さてお酒の温度によって呼び方が定義されております。表を添付しましたが、このような細かい表現を使っている方はほとんどいらっしゃいません。普段お店で使われるのは以下の5種類ぐらいでしょうか。
①
冷(ひや)・冷酒:店の冷蔵庫が5℃前後ですので、5~10℃になります
②
常温:25℃ぐらい
③
人肌:35℃ぐらい
④
ぬる燗:40℃ぐらい
⑤
熱燗50℃ぐらい
この表現が感覚的に覚えやすいし通じると思いますので、もし燗酒を注文する時は是非ご活用ください。

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