無濾過と生酒
ラベルに「純米大吟醸無濾過生原酒」との記載を見て、肩書の多さに思わずそそられる方もいらっしゃるかと思います。濾過も加水も火入れもしない生の酒そのままで、色、香り、味わいなどのインパクトが強く、個性豊かなものが多いですね。
さて濾過、火入れ、加水が常識だった日本酒に革命が起こったのは、1990年代中頃と言われます。「十四代」で有名な山形県高木酒造に続き「飛露喜(ひろき)」で有名な福島県廣木酒造が無濾過生原酒のブレイクさせるきっかけを作ったようです。加工しないすっぴんの酒は、搾りたての槽口を思わせるみずみずしさと、香り、色、味わいの強いインパクトをもたらしました。蔵元杜氏の解禁で広まった側面もあるようです。一方で香りの華やかさや強いボリューム感を「濃すぎる」「飲み疲れする」と嫌う人も少なからずいることも認識せねばならないでしょう。
少し脱線しますが、従来は蔵元=経営者、杜氏=製造責任者、と分業するのがあたりまえでしたが、杜氏の引退などによる蔵存続危機の環境から、一部の蔵では蔵元自身が杜氏にならざるを得なくなったという現実があります。しかしこれによって若い経営者そして作り手が増え、革新的な次世代の酒が次々と生まれてきたとも言えます。
ここでは無濾過、生酒について解説します。冷蔵庫が今日のように普及していない時代は、日本酒は常温でも品質が維持できることが必須でした。そのため劣化や変質を防ぐため「濾過」や「火入れ」が欠かせなかった。つまり無濾過や生酒が飲めるようになったのは、冷蔵保存や冷蔵輸送が可能になった最近だということです。
発酵が終わった後の工程によって「無濾過」や「生酒」が決まります。添付の工程図を参照しながらお読みいただくと理解しやすいかと思います。
発酵終了したものを「醪(もろみ)」と呼びますが、醪(もろみ)はその後、上槽(原酒と酒粕に分ける工程)→おり引き・濾過→火入れ①→貯蔵→調整→火入れ②、を経て完成いたします。上槽では粗く固形分を除いているだけですので、細かいものを除くのが「おり引き」「濾過」ということになります。
<おり引き>
タンクを放置し‘おり’を沈降させ、上澄みを引き抜くこと。昨日の図のように、「おりがらみ」などの濁り酒は、あえて‘おり’を混ぜることもあります。
<濾過>
濾過助剤や活性炭を混ぜて、フィルターで濾すこと。火落ち菌による腐敗を防ぐ、不純物を取り除いて雑味をなくし色を透明に近づけるほか、貯蔵中に生まれる‘老ね(ひね)香’などのオフフレーバーを防ぐ効果がある。しかし活性炭で不純物を取り除く‘炭素濾過’によって、酒の味わいが無個性になるという指摘もある。吟醸造りが増え米の雑味が精米の段階で減らせるようになった昨今では、活性炭の使用量も少なくなっているようです。
<火入れ>
これも酒の劣化や変質を防ぐための大事な工程になります。通常貯蔵前と瓶詰前の2回行われますが、最近は1回あるいは火入れをしないことも増えてきました。それぞれ定義は明確ですので、覚えていると便利でしょう。
(生貯蔵)
貯蔵前の火入れをやらず、瓶詰前の火入れのみを行う
(生詰)
貯蔵前に火入れをし、瓶詰前は火入れをやらない
(生酒)
貯蔵前も瓶詰前も火入れしない
さて解説が長くなりましたが、無濾過、生酒とは下記の通りとなります。
<無濾過>
上記の濾過をしていない酒
<生酒>
上記の生酒のことで、2回の火入れをいずれもしていないお酒
最近は酒屋や居酒屋でも冷蔵ショーケースを備えており、また輸送もクール便が普及しているので、お酒の品質管理が容易になり、蔵で味わう無垢の酒に近い無濾過や生酒が普及してきたと言えるでしょう。
少し細かいですが、醪(もろみ)以降の酒造りプロセスを添付しましたので参考にしてださい。

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